狂った歯車
「2年前の6月の翔平に戻ってほしい」
この2年間ずっとそう思ってきた。
今やスーパースターとなった大谷翔平選手を我が家では母親共々親しみを込めて
「翔平」と呼んでいるので、そう表記することを承知願いたい。
2021年6月翔平は大爆発しホームランを打ちまくった。
月間13本ものホームランを打ちホームランランキングトップに立った翔平がホームラン王になることを信じて疑わなかったが、オールスターのホームラン競争に出場しバッティングフォームを崩し、疲れや相手投手の敬遠もあって後半戦はホームラン数が半減してしまい、それでも46本ものホームランを打ったが惜しくも2本差でホームラン王を逃してしまった。
一度崩れた歯車は中々元に戻らずそれは昨シーズンも続いていたように思う。
多くの一流アスリート達が狂ってしまった歯車を元に戻せずそのまま引退して行った姿を何度も見てきたので、苦しむ翔平を見ながら何とか歯車が嚙み合ってくれないかと思わずにはいられなかった。
それでもホームラン35本という立派な数字を残したのだが。
しかも二刀流でということを忘れてはならない。
目指すべき場所
今シーズン4月翔平は7本のホームランを打ったのだがその全てが低めの変化球だった。
逆を言えば低めの変化球しかホームランに出来なかったことになる。
5月に入ると今度は逆に放った8本のホームランの内7本が高めのボールだった。
翔平も当然4月のホームランが低めばかりだったことは分かっていただろし、それを改善しようとコーチと相談しつつバッティングを調整したのであろう。
翔平はアッパースイングである。
アッパースイングの弱点が高めのボールであることは野球にある程度詳しい人なら知っていることだが、スイングの軌道が下から弧を描くように出てくるアッパースイングにとって高めは一番遠い位置になる。
当然打ちにくい。
更に翔平はヒッティングポイントをぎりぎりまで自身の近くにしている。
近ければそれだけ引き付けてボールを見極める事が出来るからだ。
翔平のメジャーでもトップクラスのスイングスピードがあるからこそ出来ることだが、
それでも振り遅れるリスクは高い。
実際翔平は2021年の後半戦以降、早いボール、フォーシームがあまり打てなくなっていた。
私は正直この翔平のアッパースイングと近すぎるヒッティングポイントは変えたほうがいいのではないかとずっと感じていた。
もっとシャープな、レッドソックスの吉田正尚のようなスイングがいいのではと。
しかし翔平はそれを頑なに変えなかった。
翔平には翔平の目指すところがあるのだろうと思い応援しようと決めたが、それでも翔平が絶好球を打ち損じるのを見る度にやっぱり変えたほうが、と思ってしまう自分がいた。
子供じみた願望
それが5月に入ると高めのボールを打ち出し、月の終わり頃にはフォーシームも打つようになっていた。
しかし逆に言えば今度は高めしか打てなくなってしまったとも言える。
そんな時私は子供じみた冗談半分願望半分でこんなことを考えていた。
「高めも低めも両方打つようになれば倍打つようになるな」と。
そんな私の子供じみた願いが叶ったことはもう誰もが知っている事だ。
そして「2年前の6月の翔平に戻ってほしい」という願いも。
前進
翔平は再び大爆発をして6月ホームランを15本も放った。
4月と5月に打ったホームランと同じ数を6月だけで打ってしまった。
だが翔平はまだフォーシームに振り遅れたりど真ん中のボールを空振りしたりすることがある。
そう、つまりまだ伸びしろがあるのだ。
2年前の6月に戻ったと私は思っていたがそうではなかった。
翔平は苦しみながら試行錯誤を繰り返し別のアプローチで再びの大爆発にたどり着いたのだ。
最後に
毎日の楽しみを、感動を、興奮を、ありがとう。
今年こそはホームラン王を取ってほしい。
2年前後半戦調子を崩してしまった教訓がある今年の翔平に不安もあるが期待せずにはいられない。