ひきこもりのひとりごと

40代ニートの生態や思いを書いてます

またいつか見られたら

二年ほど前、まだこの家に引っ越してくる前。

月に二度ほど週末を過ごしに来ていた。

散策を兼ねて近所の海のそばの公園に散歩に行った時だった。

公園の奥の池で折り返して家に戻り始めてすぐの遊具のあるところの手前まで来た時、

茶色の動くものが視界に入った。

大きさからして犬かなと一瞬思ったが、すぐそうではないと分かった。

ぴょんぴょん跳ねるように前に進んでいくその茶色のかたまりには空に向かってピンと伸びた耳があった。

「ウサギだ!」

始めてみた野ウサギに喜びと興奮が沸き上がった。

そのウサギは自分の視線に気が付いたのか気が付いてないのか、コンクリートの歩道を跳ね進み脇の繁みに姿を隠してしまった。

ここ野ウサギまでいるんだと、モグラの掘り起こした土の盛り上がりを見られてだけで喜んでいた自分は興奮したが、同時にすぐ、本当に野ウサギか?という疑問がわいてきた。

誰かが飼っていたウサギを放したのかもしれない、いやむしろそのほうが可能性は高いかと。

ここは田舎とはいえ、リゾート地でもありバブルのころは人も多くいたんだろうし、

東日本大震災以降は津波の怖さもあって人気もなくなったがマンションなども近くに建っている。

公園も定期的に草が刈られ野生動物がいそうな雰囲気はさほどない。

ウサギがいるのは意外なところだった。

やっぱりどこかから逃げたウサギだったんだな。

その後引っ越してきて毎日のようにその公園に行くようになってもウサギを見ることは一度もなく自分の中ではほぼそう結論付けていた。

が、それから一年ほどして公園の山の斜面にウサギの糞らしき小さな楕円球が十個くらい固まって落ちているのを発見する。

小学生の頃どこかで見たウサギの糞はたしかこんなだった。

やっぱりウサギはいるのか?いてほしいと再び思うようになった。

冬の日だった。

東京で何年かぶりの大雪が降った日。

こっちでも珍しく雪が積もり、次の日の午前、雪景色を楽しみに散歩に出た時、

その公園にいくつかある足跡の中に逆ハの字の足跡を見つけたのだ。

「これは!」

何度も確認した、そして間違いないと思った。

ウサギの足跡だった。

まっさらな雪の上を走るその足跡は公園の至る所にあり、繁みの中へと続いていた。

やっぱりいたんだと喜びに浸りながらしばらく足跡を眺めていた。

この辺りはタヌキがいることも分かったしウサギがいても不思議はないなと思えるようにもなっていた。

もしかしたら誰かが放したウサギが二年間生き延びたのかもしれないけれど、それでもウサギが二年生きられる環境であることには変わりない。

それだけでも嬉しいのである。

 

今日の夜食 ランチパック ハム&エッグ